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読書記録 長江俊和ー「出版禁止」

~こんなに読み返した作品あっただろうか~

長江俊和『出版禁止』
新潮文庫 2018年

■冒頭から惹きつけられる感覚■
とある総合月刊誌に掲載予定だったルポルタージュが事情により掲載見送りに。
出版界で話題になっているそのルポルタージュを読んでみたくないかと知人の
一言からこの謎解きミステリーツアーが始まる。
とてもリアルに迫ってくる感覚は淡々と語られるスタイルからだろうか。
スラスラと読める感じが逆に怖いと感じた。

ルポルタージュ形式の妙■
文庫版の構成は、長江氏による『序』にてルポルタージュを手にした経緯と掲
載禁止や出版禁止になる一般的な理由(歴史的な事も含む)を挙げ、何故この
ルポルタージュが世に出なかったのか、出版するに至った事が述べられている。
次は本編となるノンフィクションライター若橋呉成氏の『カミュの刺客』、謎
解き内容となる長江氏の『「カミュの刺客」出版にあたって』。最後に『「カ
ミュの刺客」文庫版―あとがきにかえて―』となっている。

この本の面白さは、一通り読んでから謎解きをする「再読」にあると思う。
『「カミュの刺客」出版にあたって』の章で次々と明かされる「カミュの刺客」
に仕掛けられた伏線や浮かんでくる文言。
謎が解き明かされる度にルポルタージュを読み直す。
この繰り返しがたまらなく楽しい。
ルポルタージュまでサラッと読んでいた自分に「何で気付かなかった?」とツッ
コミ入れたくなってくる。

■後からゾクッとする感覚■
謎解きミステリーだけでなく、ホラー要素もいっぱい詰まっている。
新藤七緒の家で起こった出来事も読み返すとかなり怖い。
いつも小説を読むと頭の中で映像化してしまうが、初読の時はミステリーで再
読はホラーになった。ある意味二度おいしいのかも知れない。

久々に一作品を何回も読んだ。『殺戮にいたる病』(我孫子武丸著)以来だ。