【ココ読んで!!3(スリー)】赤い着物
こんにちは。
今日おすすめするのは、”文学の神様” 横光利一氏の「赤い着物」です。
私が横光文学にハマった最初の作品です。
文庫ではこちらに収録されています。
おすすめその1 映像的表現美にしびれる
まるで映画を観ているような情景。
雨の中暗闇に浮かぶ献灯の光の下には白い梨の花。
雨に遠くの風景が隠されてしまい、濁った水が流れてくる。
暗い夜に宿を訪れた親子。幼い女の子の真っ赤な着物が目に残る。
銅壺が湯気を立てて鳴ったり、びしょ濡れの犬が通っていったシーンなど自分が映画監督になった気分で読みました(笑)
おすすめその2 灸少年のキャラクター
灸少年のキャラクター。まだ社会に出ていない小さな世界で生きている少年。身の回りの風景をいつも眺めていて、雨が降るといつも見える山が隠れて悲しくなったり、池の鯉の心配をしたり。
子供を遊ばすことが何よりも上手だった灸少年(彼も子供ですが)。いつも遊んであげて喜ばれているのでしょう。得意なんでしょうね。宿泊に来た女の子と早く遊びたく、朝早くから何度も部屋を訪れ、穴から覗いてみたり、小さな声で歌を歌ってみたり。
女の子と対面し、女の子のマネから変顔、頭を叩く・・・と”調子づいた”灸少年の暴走が止まらない。油がのってしまった。ああ・・・。
ホントにああ・・・しか声がでませんでした。
おすすめその3 読後の余韻
灸少年の”事件”の翌日、宿を後にする親子。その様子だけが淡々と描写され、冒頭シーンと同じような日常が流れていく。
あんなに大きな事件の事は一切語られず、母や姉など家族の発言や会話は一切なし。描かれたのは姉の手元に届いた”重い”良人の手紙の事だけ。非常に大きな余韻が残ります。
映画本編が終わって、エンドロールも終わって、でもまだ座席にいるような感じです。
さすが、新感覚派。
短編ですが、読後の余韻がすごいです。おすすめです。