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【ココ読んで!!3(スリー)】赤い着物

こんにちは。

今日おすすめするのは、”文学の神様” 横光利一氏の「赤い着物」です。

私が横光文学にハマった最初の作品です。

 

赤い着物

赤い着物

 

 

 

日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (岩波文庫 緑75-1)

日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (岩波文庫 緑75-1)

  • 作者:横光 利一
  • 発売日: 1981/08/16
  • メディア: 文庫
 

 文庫ではこちらに収録されています。

 おすすめその1 映像的表現美にしびれる

まるで映画を観ているような情景。

雨の中暗闇に浮かぶ献灯の光の下には白い梨の花。

雨に遠くの風景が隠されてしまい、濁った水が流れてくる。

暗い夜に宿を訪れた親子。幼い女の子の真っ赤な着物が目に残る。

銅壺が湯気を立てて鳴ったり、びしょ濡れの犬が通っていったシーンなど自分が映画監督になった気分で読みました(笑)

 

おすすめその2 灸少年のキャラクター

灸少年のキャラクター。まだ社会に出ていない小さな世界で生きている少年。身の回りの風景をいつも眺めていて、雨が降るといつも見える山が隠れて悲しくなったり、池の鯉の心配をしたり。

子供を遊ばすことが何よりも上手だった灸少年(彼も子供ですが)。いつも遊んであげて喜ばれているのでしょう。得意なんでしょうね。宿泊に来た女の子と早く遊びたく、朝早くから何度も部屋を訪れ、穴から覗いてみたり、小さな声で歌を歌ってみたり。

女の子と対面し、女の子のマネから変顔、頭を叩く・・・と”調子づいた”灸少年の暴走が止まらない。油がのってしまった。ああ・・・。

ホントにああ・・・しか声がでませんでした。

 

おすすめその3 読後の余韻

灸少年の”事件”の翌日、宿を後にする親子。その様子だけが淡々と描写され、冒頭シーンと同じような日常が流れていく。

あんなに大きな事件の事は一切語られず、母や姉など家族の発言や会話は一切なし。描かれたのは姉の手元に届いた”重い”良人の手紙の事だけ。非常に大きな余韻が残ります。

映画本編が終わって、エンドロールも終わって、でもまだ座席にいるような感じです。

 

さすが、新感覚派

短編ですが、読後の余韻がすごいです。おすすめです。